二枚の『岩窟の聖母』
ゲージュツの秋です
ずっと以前『プリマヴェーラ』についてブログ書いたら 意外と好評だったので
今回は『岩窟の聖母』のことを書いてみたいと思います。


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『岩窟の聖母』はこの世に2枚存在します。
聖母マリアと幼子イエス・洗礼者ヨハネ・大天使ウリエルを描いたほぼ同じ構図の絵で
現在、1枚目はルーヴル美術館
2枚目はロンドン ナショナルギャラリーに所蔵されています。

*大きな画像はこちら*

最初に描かれた『岩窟の聖母』は 左のルーヴル版。
ダヴィンチ自身の筆致が濃く
当時の宗教画にしてはちょっと風変わりな絵です。

特にココ↓
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この部分のことを、ちょっと前に流行った本『ダヴィンチコード』の中では
マリアが幼いヨハネの頭上に片手をかざして、
どう見ても威嚇の姿勢を示している
ワシの鉤爪のようなマリアの指が、目に見えぬ頭を握っている。
(大天使の手は)
マリアの鉤爪につかまれた目に見えぬ頭部を、喉もとあたりで掻き切るしぐさである。
と書いていました。
キリスト教界がイエスにまつわる誰かを抹殺しようとしている暗号だというのです。

それが事実かは置いといて、なんとなく奇妙で不気味な印象なのはたしかです。
この絵の依頼主であるミラノの教会も なんか気に食わなかったらしく
さらにダヴィンチが絵の代金をふっかけた こともあって
「こんな絵いらん」と言い、とうとう裁判沙汰になってしまいました。



しかたなくダ=ヴィンチはこの絵を別口に売り払い
2枚目の『岩窟の聖母』を描きました。
これが右のロンドン版です。

ヤルキなくしたダ=ヴィンチは工房の弟子たちに まる投げ してしまったため
こちらにダヴィンチの筆はあんまし入っていないと言われています。
違和感のある手の仕草は修正され、天使の指差す手も消されていますね。
やっぱ依頼主に気に入られなかった原因だったのでしょうねw

さらに修正された点として、
左の赤ちゃんが、洗礼者ヨハネのアトリビュートである十字架杖と皮の衣を着ちゃっています。
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*アトリビュートとは・・・・
西洋絵画で、キャラを特定するお約束アイテムのこと。
聖母マリアのアトリビュートは白百合。
ポセイドンなら三叉の矛。アポロンなら竪琴と月桂冠がアトリビュートです。
これはずっと後世に誰かが加筆したのだろうと言われていますが
このせいで、赤ちゃんは どっちがイエスでどっちがヨハネ?
という問題が美術界で長く争点となっています。
左の赤ちゃんは祈ってるから、こっちが格下のヨハネ。
いやちがう。一段高いところにいるから左の赤ちゃんが格上のイエス。。。と揉めてるのです。

あたしは左がイエスで右がヨハネに一票w
マリアにとってはイエスは実子・ヨハネは親戚の子です。
マリアの視線と腕が守っているほうが実の息子と考えるのが自然と思うのです。
そう考えれば天使の指差す手も、約束のメシアを指し示していると説明がつくのです。



そんなわけで、同じように見えてほんのり違う二枚の『岩窟の聖母』ですが
依頼主が受け取り拒否した1枚目は、裁判の仲裁者フランス王ルイ12世がひきとり、今はルーヴル美術館に。
手抜きで描き直した2枚目は、依頼主のミラノの教会に飾られ、今はロンドンナショナルギャラリーにあります。

DOLでも史実どおりに
「ダ・ヴィンチの祭壇画」クエストで、2枚目のロンドン版をミラノに近いヴェネチアにて、
続く「ダ・ヴィンチの真筆」クエストで、1枚目ルーヴル版をフランスのナントで発見することができます。
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by kilkenny-cat | 2007-10-12 21:59 | DOLな美術品

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